ホーム > 株式会社ばど

株式会社ぱど

株式会社ぱど

倉橋 泰

1953年
大阪府生まれ
1975年
京都大学工学部卒業
1977年
同大学院修士課程修了後、荏原製作所に入社
1987年
個人情報を中心とした地域密着型の
宅配フリーペーパー「ぱど」を企画し、       
社内ベンチャー事業として設立・創刊
1992年
MBO(マネージメント・バイ・アウト)により独立し、代表取締役に就任
2001年
ナスダック・ジャパン(現・JASDAQ)市場へ
上場(3月22日)
2004年
発行部数1,200万部達成
2006年
東京ヘッドクォーターを開設。
合弁会社「株式会社ぱどラボ」を設立
御社が成長するまでのストーリーをお聞かせ下さい。

創業以来拡大を続け、2004年には約1,200万部を達成しました。インターネットの影響が出始めていましたが、当社は“紙頼み”とばかり、紙媒体の拡大を進め、福岡・上海への展開を決めました。エリア展開を行ってもすぐに営業マンが育つ訳ではないので、前期に出た約3億円の利益を先行投資して、営業マンを大量採用し、育成に1年くらいかかるという見込みで色々な支局へ振り分けました。結果的にはパートさんも含めて168名の採用を行いましたが、人が増えたにも関わらず、 売り上げは上がりませんでした。原因を探ってみると驚いたことに、もともと営業で採用した人たちがサービスの仕組み作りやフォローなどのバックヤード部隊に変わっており、98名が内勤という事態になっていました。支局を増やすと、それぞれで内勤を増やしたために、結果的に人件費が大幅に掛かってしまって失敗ということになりました。希望退職という形はとらず、辞めていった人たちの分は補充しないという形で、時間を掛けて少しずつ減らしていきました。

フランチャイズは現状どのくらいあるのでしょうか?
14社です。もともとフランチャイズを行うつもりはなかったのですが、創業2年目くらいの時に大阪ガスさんからお話を頂きました。その当時はまだ赤字のベンチャーで、儲かる仕組みが出来たわけでもなかったため一度お断りさせて頂いたのですが、「共同の開発と言う形で」と、当社のフランチャイズ契約は大阪ガスさんが作ったという面白い経緯があります。
現在当社のフランチャイズに加盟して下さっている会社は、当社からではなく先方からのお誘いです。我々の事業はエリア密着ですから、ハンバーガーのように1つ開発すればよいのではなく、地域ごとに合う“味付け”が必要になります。そのため先行投資が必要になります。エリアによってマーケットのサイズも戦略も違うため、とても時間が掛かりますし、地元の中小のお客様を沢山集めないと利益が出ないので、最初が本当に難しいのです。そのため、当社から無理やり勧めるようなことはせず、「最初は大変です。それでもやりますか?」と確認をし、賛同して頂いたところだけがフランチャイズになりますが、フランチャイズと言うよりは ボランタリーチェーンという方が近いかもしれません。
フリーペーパー業界において他社が次々に撤退していく中、なぜ御社だけが生き残っておられるのでしょうか?

昔からあるタウン誌はどちらかと言うと編集長が取材をして「読ませる」という雑誌タイプのものでした。我々の事業テーマは、少しどぎつい言葉ですが、「新聞が死ぬ日」と言っています。30年くらい前に私がアメリカにいた当時、アメリカではTVでニュース戦争が起こっており、新聞はスピードでテレビに勝てないということで、存在価値が薄れ、購読されなくなってきていました。しかし新聞が減る一方で、チラシは伸びていたのです。アメリカでのこの現象はいずれ日本でも起こるだろう、新聞がなくなってしまったら、チラシが配れなくなるわけですから、“チラシのマーケット”という ビジネスモデルを思い浮かべました。そして地域密着型のフリーペーパーぱどが生まれたのです。新聞よりも狭い地域を選んで出稿できるため、低コストでの宣伝が可能になります。より安い金額でチラシを折り込めるようになるだけでなく、誌面ならば2行の文字広告から出すことができるのです。我々が進出することにより、お客様には新聞折込以外の、それまでなかった選択肢が生まれました。これはオリジナルアイディアではなく、アメリカに行ったときに見た細かいエリア分けのフリーペーパーを日本流にアレンジしたものです。当時のそのフリーペーパーは写植で行っていたため大きな手間とコストがかかっていましたが、コンピュータを使って編集すれば、版数が増えてもそこまでコストアップしないだろうと考えました。そして、CTPの登場で、フィルム代もかからなくなったのです。新聞というマーケットは非常に強いため、我々が進出したところで蚊に刺されたとも思わないでしょう。その分野で展開を考えていましたから、雑誌の発想ではなくてインフラの発想から始まっているわけです。新聞販売店に変わるインフラをアルバイターで作り、そこでぱどやチラシを配布する。チラシの集合体を届けるための約1万3千人の女性組織と いう“仕組み”が我々の強みです。そこが他社には出来ない点だと私は思います。インフラを作るためには非常に年月が掛かります。我々が1000万部発行するのに、15年掛かりました。これを他社が一度に行おうと考えれば、推定100億円のコストが掛かってしまいますから、他社はなかなか真似が出来ませんし、 特に今はネット社会ですから、この業界への進出は考えないと思います。

そのような組織の運営や人員募集はどのようにして行っていますか?
学生や主婦のアルバイトを大勢採用し、配布を行いました。その当時は子育てをしているとなかなかパートもできないという時代でしたが、配布のバイトは4時間くらいで終わるため、子供が寝ている間に済ませることも可能で反響が良かったです。アルバイトから口コミで人を紹介して頂くなどして、じわじわ広げていきました。
書店などにタウン誌を置いていた企業も一時期ありましたが、撤退してしまいましたね。ぱどは書店には置いていないのですか?
我々は大まかに、読むことによって行動につながる「行動マガジン」と、読んで「面白かった」で終わる「感動マガジン」という二つに分けています。さらに「行動マガジン」のなかで、メディアを見ることで触発されて行動したくなる「潜在ニーズ対応型」と、目的がすでに決まっており、行動をするためにメディアを見る「顕在ニーズ対応型」の二つに分けることができます。顕在ニーズ対応型というのは、「何か美味しいものが食べたいなぁ」とか、「来月どこかへ旅行に行こう」という欲求があるものに対して、選択肢となる情報を沢山与えてあげる。潜在ニーズ対応型というのは、何か面白いことあるかな~?と漠然と情報に触れている人に、こんな情報がありますよーと知らせてあげて、「あ、このお店行ってみたいな」とか、「こんな近くに陶芸教室があるなら行きたいな」と、行動を喚起するのです。
顕在ニーズの方はリクルートさんがやっておられますから、我々は潜在ニーズで戦うという、ジョブドメインをはっきりさせています。ですから、何もしなくても家に届く、ポスティングという流通方法が肝心なのです。
確かに、同じタウン誌で見ても御社の「ぱど」はジャンルにこだわらず、いろいろなものが混ざっているという印象ですね。
「ぱど」は売り雑誌ではなく、広告費で成り立っています。ただ、読者に手にとって読んでいただくためには、「役立つ情報」を沢山掲載していなくてはいけません。一方的な宣伝広告でなく、読者の役に立つ情報として見せるために、当社では読者モニターから、お店のどういった情報がほしいか?、どういうお店だと行きたくなるか?というような意見を集めて、誌面作りに反映させています。
現在、御社ではモバイル対応も行っていますが、売り上げ構成比はどの程度でしょうか?
紙媒体が圧倒的に多く、9:1くらいです。まさに“紙頼み”です。 ぱどがスタートした当時は情報の発信者が限られていた時代で、みんな情報に飢えていたため、地域情報と言う切り口でぱどを発行したところ、老若男女問わず手に取っていただけました。 ジャンルがばらばらな4行程度の文字広告を沢山掲載していました。情報が少ないので、「まず電話で問合せ」というところからスタートしました。ところが、インターネットやモバイルが普及して、個人がホームページやブログを作って手軽に情報を発信できるようになりました。インターネットが出始めの頃はホームページの閲覧がそのまま集客につながっていましたが、更に時代が変わり、今は情報が飽和状態で、同じキーワードで検索をしても沢山のページが出てくるため、誰にも見られていないホームページは山ほどあるのです。 今の読者の行動パターンは、お勧めのお店を教えてもらったら、そのお店の地図や割引などの情報を必ずチェックします。そこでお店はホームページをつくって沢山情報を掲載するわけですが、ホームページは受動的なものですから、見てもらうためには、“入口”が必要になる。「誰が“入口”を作るのか」というときに、ぱどが“入口”の作用を果たしているのです。「いかにホームページへ誘導するか」というコンシェルジュとしての機能が、昔と違う今の我々の仕事です。ネット社会になればなるほど、“入口”が必要となります。 ぱどの誌面を見ても、昔と比べて大きく変わっています。同じ広告面積の中でも、写真を大きくして割引などの特典をわかりやすく表示しています。逆に、小さくなったのは店名です。店名から集客はできないんですよね。写真と特典を見て、「行きたい」という意欲に繋がるのです。以前は店名が小さいと「目立っていない」とおっしゃるお店もありましたが、内容を説明すると納得して頂けます。“いかにいい写真を選ぶか”というのも当社の営業マンの仕事です。
御社の営業について、お聞かせ願えますか?
担当地域に密着し、端から端まで電話でアポを取ったり飛び込みをしたりと泥臭い営業です。メインは飲食やエステ、美容室など生活に密着した業種のお店さんです。読者モニターが何百人といるので、お店を選ぶ基準や、行きやすい時間帯など、いろいろなアンケート調査を行って、それを広告内容に反映させています。読者は色々な情報を求めているので、1件でも多くの情報を伝え、1人でも多くの読者をお店に連れて行くというのが重要です。 我々のコンセプトは、街の活性化です。遠くへ行くよりも近くで買い物をした方が交通費も掛からず節約になりますし、地元で買い物をした分地元に税金が入りますから、どんどん自分たちの街が良くなります。「みんなで自分たちの街を良い街にする」というのが我々の存在価値なので、それをお客様にも伝え、一緒に街を盛り上げていきたいのです。
そうしますと御社は、営業マンの営業力が決め手と言うことになりますが、人材教育はどのように行っておられますか?
まず、私たちは何のために働いているのかというコンセプトをしっかりと理解することから始まります。私たちのビジョンは「情報を通じて、人と人、人と街をつなぎ、人も街も元気にする」“人・街・元気!”というもので、これはお店と人を上手くマッチングさせたら皆ハッピーになるのではないかということです。 もう一つは、あらゆる意味でのコンサルティングです。お店の雰囲気改善や写真選びのアドバイスなど、あらゆるコンサルティングを行っていますが、当社では 美容室やネイルサロン、飲食など、6業種についての集客マイスター試験を3ヵ月に一度、社内で行っています。科目ごとにテキストがあり、この試験に合格すると集客マイスターの称号が付きます。6科目全取得している社員は全体の80%程度です。合格しなかったら、また3ヵ月後に再受験します。当社は地域密着事業ですので、いろいろな業種の店舗様とおつきあいしますし、媒体によって読者のニーズが変わってくるので、そこで訴求ポイントなどを変える必要があります。
また、当社は「ぱど商売名人」という商品も持っています。こちらは携帯メール電話を活用した集客サービスで、キャンペーンなどで集めた顧客情報を使い、特典つきのメールマガジンの配信などを行っています。当社の事業では、紙・ネット・モバイル、あらゆるものをお客様に提供するために、幅広く多くのことを勉強する必要があるのです。こういった社内基準を設け、常に勉強をすることは、お客様の安心感にもつながっていくと思います。
営業マンは業績の良し悪しがあると思いますが、御社の場合はどういった点で差がつきますか?
出来る人はスケジュール管理が上手い人です。営業の場合は1日あたり何人のお客様に会えるかという時間管理が重要です。また、1人1人受注率が違ってきますので、受注率の低い人は受注率を上げる方法を、受注率の良い人はその受注率を踏まえた行動をする必要があります。成績が上がるとどうしても手を抜く傾向が出てきてしまいますが、打率の良い人の打席を多くすると会社としても成長しますよね。そのためにはもっと上に行けと喝を入れなくてはなりません。例えば、課の目標を達成しようとしたときに、全員が目標を達成することはまずありえません。出来ない人の分を出来る人がカバーする必要がありますから、そのためには出来る人のモチベーションを上げ、突き抜けさせる必要があります。そのために、当社では社内コンテストなどの報酬制度を行っています。コンテストに名前が上がると、自慢や自信に繋がりますよね。こうしてゲーム感覚で遊びながら伸ばし、モチベーションを上げます。
今後もメインは紙媒体ですか?
わたしたちのビジョンは、情報を通じての”人・街・元気!”であり、広告を沢山集めることではありませんから、紙は一手段に過ぎません。情報を伝える手段は沢山あったほうが良いのです。お客様には、紙・ネット・モバイルなど、伝達ツールを提供し、TPOに応じて上手に使い分けするためのノウハウを提供していきます。 そのためには、わたしたちが常に読者の皆様、お客様の声を聞き、勉強をしていかなくてはと思っています。

Company Data

株式会社ぱど

業  種
出版/専門コンサルタント/各種ビジネスサービス
設  立
1987(昭和62)年8月20日
(情報誌『ぱど』創刊 1987年10月1日)
資本金
5億2,653万円
(2012年3月末現在)
連結売上高
78.6億円
(2012年3月期)
住  所
〒231-8483
神奈川県横浜市中区桜木町3-8
横浜塩業ビル
URL
http://www.pado.co.jp

Corporate website

株式会社ぱど

Access

 

Google Map