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株式会社アドバンスト・メディア

株式会社アドバンスト・メディア

鈴木 清幸

1952年
愛知県生まれ
京都大学大学院工学研究科化学工学を専攻し、
博士課程2年修了
1978年
東洋エンジニアリング株式会社入社
1986年
株式会社インテリジェントテクノロジー入社
1987年
米国カーネギーグループ主催の知識工学エンジニア
養成プログラム(KECP)を修了。
1989年
研究開発部長を経て常務取締役に就任。
1997年
株式会社アドバンスト・メディア代表取締役社長となる。
2005年
株式会社アドバンスト・メディアがマザーズに上場。
2010年
代表取締役社長兼会長に就任し、現在に至る。
商品、営業、人材。この3つについて、御社ではどのようにして成長力を担ってきたのでしょうか?

まず、当社のビジネスは音声認識によりロゴで表している「ポジティブスパイラル」――すなわち、「持続」と「成長」を実現するビジネスです。
音声認識は、日本では1960年の京都大学とNECの音声タイプライターの共同開発から始まり、当社を設立した1997年には、成功例のない、赤字ビジネスと言われるほどでした。
「持続」と「成長」のためには音声認識の市場を創らねばなりません。音声認識の市場を創るには世界最高の音声認識の技術(AmiVoice)が必要ですが、それだけではダメなのです。「ビジネス化する」ことが必要です。これはAmiVoiceならではの商品、サービスを開発し、ユーザーをつくり、使い続けていただくことを意味しています。
「ユーザーをつくり、使い続けていただく」と簡単に言っていますが、実はこれがとても大変で労力と時間を必要とすることなのです。すなわち、これは革新性がある商品やサービスが生まれたことであり、革新性が前面に出れば出るほどそれらに飛びつく層は限られてくる、つまり、「機械に対して喋る文化」がないところにいくらそのようなものを提示しても「暖簾に腕押し」状態になってしまいます。したがって、「機械に対して喋る文化」も同時に醸成しながらチャレンジをし続けることになり、そのための労力や時間が並大抵なものでないことは容易に想像できると思います。
当社の営業は「モノ売り」営業ではなく「モノやコトつくり」営業です。「モノやコトつくり」のチャレンジを行い、跳ね返されながら、行い続けてやがては目的を達成します。これらの失敗と成功の体験により人が育ち、名実ともに「人材」になっていきます。同時に組織が育ち、会社が「持続」「成長」していくことになるわけです。
「機械に対して喋る文化」の醸成は2009年にグーグルが音声検索を、2011年にはアップルがSiriを発表し、テレビ、新聞等で効果的な宣伝を行ったことで急速に進展しました。したがいまして、3つの条件が揃ってきた今、愈々、音声認識の市場化と音声認識ビジネスが本格的に始まったと言うことができます。

世界最高の音声認識の技術(AmiVoice)はどのようにして誕生したのでしょうか?
世界最高の技術といえるにはいわば「ビジネス哲学」に踏み込まねばならないと思います。
従来の音声認識が赤字ビジネスであったことの主因はユーザーが(コンピュータを内包する)機械に合わせなければコミュニケーションという目的が叶わないことでした。機械主導型から人間中心型への転換。人が自然に喋っても機械とのコミュニケーションがとれる音声認識技術、すなわち、事前の学習が不要で、話すスピードや、抑揚、アクセントの違いに対応できる音声認識技術でなければならなかったのです。
では開発できるのか?
前職の人工知能(AI)ビジネスでは米国のカーネギーメロン大学(CMU)との関係もあり、米国国防総省のDARPA(Defensed Advanced Research Project Agency)主催の音声認識技術競技会で1996年、97年に最高位を獲得したCMUのチームとの提携に成功し共同開発をすることができたのです。日本、米国、ドイツ3か国をまたがった共同開発体制で3年間かけてビジネスに供するものができました。
御社が音声認識を「ビジネス化する」過程の「これまで」と「これから」を教えてください。

技術開発を経てビジネス化への動きはAmiVoice音声認識エンジンを内包するアプリケーションプロダクトの開発・販売により2002年辺りから始まりました。2003年には10ほどのプロダクトを世に送り出すことができ、その年は大赤字になったものの、次年はそのプロダクト販売が奏功しわずかながら黒字を計上することができました。これは音声認識専業会社が黒字化した世界初のケースでした。更に黒字化を続けて2005年6月には東証マザーズに株式上場しました。しかしながら、革新的な商品を認知し積極的に導入・普及させるアーリーアドプター*1)は多くはいないし、彼らが当社のプロダクトの普及に成功したわけではなかったので2006年をピークに売上の減少が始まりました。革新的なビジネスにつきもののキャズム(Chasm)*2)を越えるために、従来のプロダクトのホールプロダクト*3)化、プロダクトアウト型のプロダクト開発からマーケットイン型への転換などに向けて種々の試みを行った結果を踏まえ、2009年3月期より3年間の中期経営計画を策定し着実に実行したことにより、15~30%アップの売上増と営業赤字の縮小に成功しました。更に、次の3年間の中期経営計画により(今年度が2年目)、プロダクト事業とソリューション事業に対してサービス事業の付加とグローバル展開を実現し、「持続」と「成長」の礎を築こうとしています。

*1)アーリーアドプター・・・・・Early Adopter。採用者、採択者。マーケティング用語では、イノベーターと同様に、新商品・新サービスなどが市場に投入された際、最も早い段階で採用する人々のこと。
*2)キャズム・・・・・ジェフリー・ムーアのハイテクマーケティングについての理論において新製品・新技術を市場に普及させていく上で、初期段階から一般市場への拡大を目指す際にみられる深い溝のことをいう。先駆的なユーザーと一般ユーザーとの間にある深い隔たりを乗り越えられるかどうかが、その製品が普及するか、一部の新製品マニアに支持されるにとどまるかどうかの鍵である。
*3)ホールプロダクト・・・・・マーケット分野の第一人者であるセオドア・レビット博士の提唱した言葉。ある製品において、顧客満足度をあげるために必要と思われる周辺製品(およびサービス)すべてを段階的にそろえること。

御社の「これから」を実現するキーファクターとは何でしょうか?
当社の「これから」を実現するキーファクターは(1)個の能力のアップ(2)組織力のアップ(3)パートナー連携の拡大と強化です。
役割の異なる個夫々の能力アップにより、世界最高の技術であり続けられ、組織力のアップにも繋げられます。それに相まって、ビジネス化が進み、これらの効果により、パートナー連携が進み、これにより、ビジネス化が更に進展するという連関が生み出されます。
「ベンチャービジネスは人材が全て」とはこの連関のことも意味していると思います。
それでは個の能力アップはどのようにするのでしょうか?
実は能力がアップしたから成果がでるわけではありません。
失敗を繰り返して1つの成功につながった時に能力がアップしたというのです。
結局は失敗と成功の体験に基づく人材の育成ということになります。
パートナー、というのは具体的にどのようなところでしょか?
パートナーには技術パートナーとビジネスパートナーの2つがあります。
連携すると双方にとってWinになる企業、個人です。
技術面で連携をする相手が技術パートナー、ビジネス面で連携をするのがビジネスパートナーです。
具体的には、技術パートナーとして米国のM*Modal、ビジネスパートナーとしてみずほ情報総研株式会社、東邦薬品株式会社などが挙げられます。
人材の育成がキーファクターとうかがいましたが、「人材」とする人の採用も大事かと思われます。 採用の基準とか人材育成プランなどを教えてください。
当社の事業目的は音声認識により「持続」「成長」するビジネスをつくることです。
これを正しく意欲をもって、いわば、生きがいとして行うには理念というバックボーンが必要です。
採用の基準は求める「人材」に育つ能力の有りや無しやに加え、理念を共有できるかです。
当社の企業理念は育てられた両親や社会に恩を返せるレベルになり、その恩を返すことで社会にとって、更には、人類にとってなくてはならない存在になるというものです。「報恩」が企業活動、ひいては我々が「生きること」の目的そのものです。この考え方を後進や子孫に継承することも報恩であり、この継続が人類に永遠の生命をもたらすわけです。
人材育成プランとして特別なものはありません。しかしながら、いくつかの失敗と成功が育成のポイントですので、失敗を恐れずにチャレンジを促す「チャレンジ&チェンジ」という企業文化とOJTがそれに相当するものと言っても良いと思います。また、入社後1ヶ月間は、「会社のことを知る」「社会人の基礎を知る」「営業・開発の基礎を知る」等々の導入研修を行います。その後は、3・6・9ヶ月研修(1週間)を行い、現状の確認とさらなる成長のための集合研修を行います。また、IT技術に関するe-ラーニングを用意しており、IT技術に関する基礎を学習していただきます。
中期計画としては、売上や社員数、経営についてどのように見積もっておられますか?
当社のビジネスはベンチャービジネスであり、チャレンジをし続け、失敗の繰り返しの中で成功(成果)を勝ち取り成長していくものです。今から5か年の中期計画では売上規模で現状から桁を一桁上げることを考えています。これは前述の第2次中期経営計画(2012年3月期~2014年3月期)で示された幾多のチャレンジを実践し、場合によっては計画値の修正も行いながら実現されていきます。(中期経営計画の売上予想値は当社のホームページにも挙げてありますので参照ください。開示は世の中に対するコミットメントした数値です。失敗を糧に新たなチャレンジを行い、これを繰り返し目標値に到達させることになります)
ビジネスのイメージはAmiVoice音声処理技術を利用したグローバルなマーケット分野に向けての多種多様なサービスで、社員数は現状の5倍くらいと考えています。
今、エンドユーザーの業界では今後医療や介護の分野に力を入れている印象ですが、御社の場合はどうですか?
医療分野や介護分野は現状でも、そして、今後においても当社のビジネスにとって極めて重要な分野と捉えています。それは「書く必然性」が存在する分野だからです。従来は紙にペンで書いていましたが、今やコンピュータにキーボードで書く時代になり、これからは当社のAmiVoiceにより声で書く時代になっていきます。
現在、AmiVoice Exシリーズで①読影分析レポート作成用音声入力②電子カルテ向け音声入力③調剤薬局向け薬歴音声入力などの用途で約4,130件の病院関連施設での導入事例があります。
日本の病院数は約9,000、クリニックの数は約10万、調剤薬局の数は約55,000です。導入率は夫々①約50%②約5%③約3%となっています。
①②の販売は直接販売と医療ベンダー(医療メーカー)様経由と半々です。
③につきましては東邦薬品様が”ENIFvoice”というブランド名で販売されています。
お蔭様でこの分野の音声入力ではオンリーワンとなっておりますが、アイズフリー、ハンズフリーという音声認識ならではの機能性にも磨きをかけ②③の分野での普及率のアップを目論んでいます。
議事録作成の分野での実績もお教えください。
導入自治体は約60、民間での導入件数は約30です。東京都議会様、北海道議会様、沼津市議会様などが導入されておられます。競合はNEC、NTT東日本です。現在でのシェアは当社が約70%強、NECが20%強、NTT東日本が数%です。この分野ではナンバーワンのシェアとなっています。
御社の商品分野別の売上というのはどのようになっておられますか?
医療ビジネス分野と議事録ビジネス分野を統合させた医療・公共向け事業で1/3、電話向け(CTI)事業で1/3、クラウドサービス事業で1/3を売り上げています。
日本に先行する米国の音声認識ビジネスでも医療と電話関連がその双璧となっています。しかしながらその規模では日本の40倍ほどの違いがあります。これは日本の音声認識ビジネスがこれから急速に伸びていくことも意味しています。
特に、医療分野では当社の技術パートナーである、M*Modalが米国医療分野における最大の音声認識事業者となっています。米国では民間の保険会社が病院やドクターに対する支払いのトップにいますので、各種書類やエビデンスなどの記録が要求されますがそれをドクターがタイプすることはなく、国家資格を要するメディカルトランスクライバーと呼ばれる秘書が行います。音声認識による高度なサービスでドクターや秘書の事務作業や医療過誤などを軽減しより高度で役に立つ方向への動きが進んでいます。日本でもドクター自らが書類作成や電子カルテなどの事務作業を行う献身で米国に次ぐ医療水準を維持してきた段階から音声認識サービスの利用でより高度で患者にとって役に立つ段階へ移行する時期が来ています。
CTIの分野でも米国では2000年より電話へ音声認識対応IVR(Interactive Voice Responder)の導入が始まり、不満の声が渦巻くなかでも導入が進み現在では大きな音声認識の市場を形成しています。一方、日本では音声認識技術に対する不信感と最初の導入者にはなりたくないという感覚が相まって導入が進まず大きな市場形成には至っていません。しかしながら当社の電話通話録音の見える化、NGワード、NG表現の監視、指導などを具備した商品やサービスの導入が始まったことに加え、昨今のモバイル端末やモバイル電話などに喋りかけて欲しい情報を取り出すことのできる音声対話が電話でも使えそう、実働例ありということが音声認識対応IVRの導入候補者にも届く状況が出来たことにより急速に市場化が進展し始めると思います。
更に、クラウドサービス分野でもスマホやタブレット、これから生まれる様々なスマートデバイスで有用な「声」での動作、「声」の記録、テキスト化などに当社のAmiVoiceクラウドサービスが利用され継続的に増大する売上収入を期待することができます。

Company Data

株式会社アドバンスト・メディア

業  種
AmiVoice® を組み込んだ音声認識ソリューションの企画・設計・開発を行う「ソリューション事業」
AmiVoice® を組み込んだアプリケーション商品を提供する「ライセンス事業」
企業内のユーザーや一般消費者へのサービスにAmiVoiceを提供する「サービス事業」
設  立
1997年12月
資本金
45億8,509万円(152,602株)
(2012年3月末現在)
住  所
〒170-8630
東京都豊島区東池袋3-1-4
サンシャインシティ文化会館6F
URL
http://www.advanced-media.co.jp

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